「憧れ」が見つかるのが楽しくて、それを仕事とは思っていなかった頃の話。

自分はつくづく運の良い方だと信じてやまない。

こと、人徳については特に。

 

1月末に、5年ほどお世話になっていた会社を退職した。

新卒入社してから最終出社するその日まで、とても慌ただしかった。

最後まで慌ただしすぎて感傷に浸る間もなかった。

語る思い出が多すぎる、濃密で一瞬の日々だった。

 

 

ただ、ド文系出身で右も左もわからない自分が

なんとかSEの卵としてやってくることができたのは

上司、先輩、同期、後輩、お客さん…

多方面の人々に心底恵まれていたからだと断言できる。

 

 

やりがいとか、目標とか、キャリアとか、

耳障りの良い言葉をなるべくこねくり回して

それに当てはまる姿がかっこいいと頑張ってみたこともあったけど

結局イマイチまだ落とし込めていなくて、ふわふわしていて

緊張感がないまま今に至っている。

みんな何で武器や防具のように使いこなせているんだろう。

その使い方を、知ってるんだろう。

 

**********

 

自分は、しごとを「憧れを見つけるためのもの」だと

今も若干、信じている節がある。

 

いくつでも思い出せる、「憧れ」。

 

ピヨピヨのヒヨコと大差なかった新卒の頃。

電話を耳と肩で挟んで難解な会話を繰り広げながら

意味不明の文字の羅列を迷いなくキーボードで打ち込んでいく

隣の席の先輩の姿がたまらなくかっこよかった。

 

向かい側でお客さんからの電話で矢継ぎ早に質問されても

ひとつひとつ丁寧に、やさしく、何度でも

根気強く軽快に応えていく先輩の姿がまぶしかった。

 

「あんな風になりたいなあ」、ただただそう思った。

 

普段は自分の会社の中ではたらくことが多かったけれど、

数度、社外に出てお客さんを目の前に仕事をすることもあった。

 

スーツを着こなして、常に数人でミーティングしながら

あちらこちらを行ったり来たりしては

立ちどころに困りごとを解決していく人。

 

おしゃれなオフィスできれいに着飾って、

これまた見栄えのいいお弁当を持ち寄って食べている人。

 

首が痛くなるほどの高層階へ颯爽とエレベーターでむかって

グリーンに囲まれた打合せ場所でコーヒー片手に

ちんぷんかんぷんなお客さんの要望をどんどんかみ砕いていく人。

 

肩掛けリュックを軽々としょって、

隣県からまた舞い戻り、瞬時に次のお客さんのところへ移動しながら

色んな拠点へ指示を飛ばし、渡り歩いていく人。

 

もくもくと画面に向き合っていたかと思ったら

タブレットをしきりに動かして、「はいできた」と呟いて

不可能だといわれた実装を可能にしてしまう人。

 

無理難題をつきつけられても、次の瞬間には

最適解を見つけて期待以上の答えをもたらす人。

 

自分用のモニターに、子供の写真を設定してばりばり手を動かす人。

 

思案深くて、その人が出した結論には

周囲が全力で信頼を置く、という長老のような人。

 

どんな場所であっても、応する人がだれであっても

それが自分の中で様々な「憧れ」に昇華するのがうれしくて。

その「憧れ」に囲まれてはたらく日々がどれだけ幸せか。

もう無我夢中でキーボードを叩き、

プログラムに向き合い、

電話で質問に答えながら

メールを打つ手を止めることはなかった。

 

いま、

あの時憧れた先輩のように、

一緒に働いていたお客さんたちのように、

自分はなれているのか?と聞かれれば、

首を横に振るしかない。

 

憧れに追いつきたくて、たくさんの憧れに出会いたくて

必死にもがいて進んできたけれど、正直自分はまだまだ未熟だ。

あの頃の先輩たちにも、お客さんにも

何やってるんだと笑われてしまう気がする。

 

けれど。

 

退職するその日、新卒入社してきた1年目の後輩が手渡してくれた手紙。

 

「先輩は、私たちルーキーの憧れです。」

 

ヒヨコだった自分と、後輩の彼の姿が重なった。

しごとに向かう人の姿は、こうやってできていく。

 

次のしごとを何に据えるかはまだ決めていなくて

ゆっくりと休みながら、日々を過ごしている。

だけど、次にはたらくその場所でも

自分の「憧れ」探しは続いていく。

 

難しいことはわからないけれど、

そうなると、信じている。

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by 株式会社Jizai「転職nendo」